家庭教師 Kさんの話
Kさんのもうひとつのバイト先
私と弟の家庭教師をしてくれていたKさんは、もうひとつアルバイトをしていました。
私の住んでいるF市のずっと西、S市の大きな病院で、働いていました。
S市は大きな街で、海があります。Kさんの働く病院は、診療科の数が30近くもある大きな病院です。

Kさんはそこでご遺体を洗う仕事でした。Kさんいわく、給料がとても良い!だそうです。
Kさんの洗うご遺体は、日によって様々だったそうですが、最初のころは外傷の無い、ここの病院に入院していた患者さんが多かったそうです。
それが次第に慣れてくると、救急搬送されてきた外傷のあるご遺体や、毒物を飲んで自殺したご遺体、焼死したご遺体など、初心者ではちょっと扱いの難しいご遺体だったそうです。
当時はまだエンバーマーなどが普及していなかったのでしょうか。Kさんがご遺体にファンデーションを塗ってさしあげる事もあったそうです。

外傷がひどいときは出来ないが、外傷の無いときは、このようにしてご遺体を洗ったと教えてもらいました。
①ご遺体専用のバスタブが何個かある部屋でご遺体を待つ
②ご遺体が来たら合掌
③バスタブの横の台についている網のハンモックを台にのせる
④ご遺体をバスタブの横の台に移す(もうひとり作業者がいるそう)
⑤ハンモックを上に引き上げる装置で上げてから、湯にご遺体をおろす
⑥洗う
といった手順だったと記憶しています。
その日、Kさんの仕事場にご遺体が2体、来たそうです。
もう一人いた作業者と、どちらのご遺体を担当するか、話をしてから作業にとりかかりました。
Kさんがご遺体に合掌し、作業を始めようとご遺体へ手を伸ばしたところ、この部屋に響くほどの大きな声で、
「さわるな!」
と怒鳴られたKさん。あわてて手を引っ込めました。
もう一人の作業者に
「すみません!僕、ダメなやり方でしたか?」
とたずねると、
「えっ。・・・何も言ってませんが」
察したKさんは
「・・・。すみません、空耳かもしれません」
それはご遺体の怒鳴る声でした。
Kさんはこの作業場で、時々ボソボソ話し声など何か聞こえていましたが、楽天的な性格のため気にしていなかったそうです。
しかしこの時はあまりの大きな声に、これは人間が怒鳴ったなと判断し、もうひとりの作業者に尋ねたそうです。
どうしようかな・・・ でも仕事だし時給が良いから辞めたくないな・・・ みんなこういう事が嫌で辞めちゃうんだよな、など色々と考えた末、もう1度ご遺体に手を伸ばすと、
「さわるな!!!」
先ほどよりも大きな声で怒鳴られたそうです。
困ったKさんは手を引っ込めてしばらくご遺体を前にしてしばらく考え込んでしまいました。
すると、もうひとりの作業者が、
「大丈夫?ご遺体、交換しようか?」
と申しでてくれたので、Kさんは
「すみません」
と、洗うご遺体を替えてもらったそうです。

違うご遺体を洗う事になったKさんですが、またあのご遺体が怒鳴るのでは・・・と、向かいの作業者とご遺体を気にしながら作業を始めました。
すると、
「ああ、そうだったのか」
ともう一人の作業者が言い、Kさんは顔をあげました。
作業者の手にはカツラがあり、ご遺体の頭から外した状態でKさんにこう話したそうです。
「カツラの人はさ、やっぱり見られたくないんだよ。」
Kさんはしばらくこのバイトをしていましたが、結局、辞めました。あんまり霊感の無い人がやったほうがいい仕事だぜぇ とはにかんだような笑顔で、この話を教えてくれました。
今日から私も褒められバスト【ルーナナチュラルアップナイトブラ】