後ろ

中学生になったある日のことです。
1週間ごとに席の移動があるクラスで、私はその3週間は後ろのほうを移動するだけで、ちょっとボヤっとしてても見つからないかなぁ。なんて呑気に考えていました。
(実際1番見つからないのは先生の目の前、教壇の真下だと気づきましたが)
風がそよそよして気持ちの良いお天気でした。
午前の空気は新鮮で、なんだか頭もスッキリしています。
前から回ってくるプリントが多い
小学校もそうですが、前からまわされてくるプリントが多く、先生が数え間違うと1番最後の席は『1枚足りません』とか『○枚多いです』とか言わないといけません。
私は恥ずかしがりなのでいちいち嫌でした。
ぴったりの枚数でまわってくる時はホッとしたものです。
その日はプリントの配布も滞りなく済み、またぽやーっとしていました。
すると後ろの子が私のセーラー服の襟のスソを持って、ツンツンと下方向へと引っ張りました。消しゴムとか忘れたのかな?と振り返ると、そこに机は無く、私が最後列の席だったのです。
あ、そうだ 私が1番後ろの席だった・・・。
昼間でも、霊?見えない人はぜんぜんちょっかいを出してきます。
カレーと漫画
この頃、私は漫画にはまっており、夜中まで漫画を読みふけっていました。
中学生なので、睡眠時間が少なくても翌日は元気ですし、あまり寝なくても支障がありません。
この夜は、家族が寝静まった後の深夜に1階の台所でギャグ漫画を見ながらカレーを食べ、大笑いしていました。
『激烈バカ』や『浦安鉄筋家族』などをゲラゲラ笑いながら読んでいるので、眠くなりません。
深夜になるとおなかがすくので、カレー以外にも気に入っていたリッツチーズサンドなど、『太る』など全く気にせず食べていました。胃ももたれないので、ただ単純においしいな~という感じで、深夜にも関わらず食べたいだけ食べていました。
私の実家は、台所から玄関まで廊下があり、その右側に祖父母の寝室、仏間があり、左側は2階へ続く階段と、階段の下に大きな収納スペースがありました。
その日は廊下と台所をつなぐ引き戸を開けっぱなしで、漫画を読んでいました。
台所の椅子に座り、テーブルにこれから読む漫画を積み上げ、食べ物と飲み物を並べていました。
中学生の私にとって、この時間は至福でした。人生で最も楽しいと思ったことの一つです。
天井・・・
カレーをもぐもぐ食べていると、なんだか視線を感じます。
遅くまで起きていると、母が起きて来たりおばあちゃんがトイレに気がてら「早く寝なよ」という時があるので、この2人のどちらかだと思いました。
特に母は21歳で私を産んだので、当時35歳でまだイタズラ心があり、時々足音をさせずに台所へ近づいてきて、『わっっっ!』とか言って驚かせることがありました。
おばあちゃんは大正生まれなので、いくら平成の始め頃でもだいぶお年寄りでしたから、忍び足では近づいて来ません。
母かな?大きい声出すつもりかな?
と思い、驚かされないように、台所の引き戸の影になったところをそーっと見に行きました。
誰もいません。
あれ?気のせいかな?
一応両親が寝ている2階を見上げましたが、人の気配はしません。
この1直線の傾斜がきつい階段を一瞬で登れる訳はないので、自分の気のせいかな。と安心し、また椅子に戻って漫画を見始めました。
夜中に食べるカレーやラーメンって、異様においしいなぁと楽しい気分で、時計は2時をまわっていました。
また、視線を感じます。
ん?
ふと廊下に目が行きました。
そして何気なく廊下の天井を見ると、天井に男のひとがこちら向きでしゃがんでこっちを見ていました。
なーんだ。あれか。
私は特にびっくりもせず、漫画の続きを見たかったので気にせず漫画へ戻りました。
浦安鉄筋家族という漫画には、変わった人がたくさん出てくるので、なんとなく感覚がマヒしていたと思います。しばらく漫画を読んでいると、
あれ?天井に人がしゃがんでたら、変じゃない?
と思い、もう1度見るとその場所にはもう誰もいませんでした。
思い出してみると、しゃがんでいる体はしっかりあるのですが、顔のところだけボワンとしていておもいだせません。
なんで天井にしゃがんでいたんでしょう。
このときは面白い漫画を読んでいたので、あんまり怖くなくて良かったなぁとおもいました。
なんとなく、寝ないとダメかな?と思い、歯を磨いて寝ました。
中学生になったころのお話しでした。
