走り抜けたひと
また夜中の絶叫
弟が中学生になってすぐの頃です。
私達家族は、祖母、父母、私、弟の5人家族で、祖母以外は2階で寝ていました。
父母の寝室が南にあり、隣が私、北に弟の部屋がありました。
ベッドの配置が、私と父母は南北に沿う向きで、弟だけ東西に沿うかたちになっていました。
たぶんこのベッドの配置次第で、この晩の被害者は違っていたのだと後からわかり、ゾっとしました。
腹を踏んだのは
『うわあああああああああ』
弟の部屋から絶叫が聞こえました。
弟は比較的はっきりと大きな声で寝言を言うタイプなのですが、この時はあまりに大きな声だったのでびっくりして飛び起きました。
同様に父母も起きたようで、あわてて廊下へ出ると目が合い、すぐ弟の部屋に行きました。
部屋の電気をつけると弟は引きつった表情と、お腹を抱えて痛そうにしています。私達の顔を見ると、
「誰かに思いきり踏まれた!痛い!」
と言い、上体を起こしていたもののベッドに倒れこんでしまいました。
「踏まれたのかい。そりゃ夢だよ」
と父母は部屋に帰ってしまいました。
「違う!夢じゃない!」
弟は声を荒げて反論しましたが、父母は真夜中ということで早々に話も聞かずに寝室へかえってしまいました。
南から猛ダッシュで走ってきた人

弟がベッドで横になっていると、遠くからだっだっだっと走る音がしたそうです。
何となく違和感を感じながら聞いていたそうですが、その足音はあり得ないところを走ってきて・・・ 南側から両親の寝室めがけて突入してきたそうです。
何故そこを走っているのがわかるのか、さっぱり理由はわからないのですが、2階に突入できる高さを走ってきたようです。
そして何か変だ、起きよう!と体に力を入れるも、なんと金縛りに遭っていて体の自由が全く効かない状態で、まずい、このままだと何か危ない・・・ と思っている間に、その人は父母の寝室のガラスを突き抜けて走って入ってきて、だだだだと壁をまたすり抜け、何も無いかのように走り抜けて、弟の腹を思いきりドンと踏んでいなくなったそうです。
いなくなる前に、部屋の隅の少し高い所で丸い光る物体になり、それがまた恐怖だったそうです。弟が大きな声を出すと、消えたそうです。踏まれた上に、姿まで見えたら、怖いですもんね・・・。
「夢なら、踏まれた痛みがあるわけが無い」
と弟は続けました。
ベッドの向きで、私は踏まれないで済んだんじゃないかと弟は言い、その後弟は部屋の模様替えをしていました。
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