兵隊さん

カーキ色の軍服

ocean wave
ocean wave

高校生の時のお話しです。
高校1年生くらいの時に、友達の紹介で付き合い始めた彼と、海でデートをしました。とても純粋な彼で、この海へ行って初めて手をつなぎました。彼はスケボーが得意で、いつもスケボーを持っていました。
この日は、海を散歩しようという事になり、お互いの学校が早く終わるので駅で待ち合わせして、近くの海に行きました。
海は荒れていて、なんか危ないねぇという事で、海から違う場所へ歩きました。

彼が何言ってるのかわからなくて怖い。

ゲートボール
ゲートボール

海から離れるように歩くと、ゲートボールをするグランドと、休憩用の小屋がありました。
彼は、そこで座ろうといい、ベンチの砂をパッパッと払ってくれました。
そこで色々話して笑っていると、彼が
「なんだコレ」
と言い、座っていたベンチの下から何か拾いました。
それは砂まみれで元が何色かわからない汚れた帽子でした。
「わっ、汚いな!」
とそれをポイっと投げて、
「雨降るとやだから帰ろう。」
と彼がいいました。うん、と返事をして、帰ろうとすると、彼が
「なんだ?あのじいさん」
と、さっきまで座っていたベンチを指さしています。
でも、・・・そこには何もいません。
「なんか騒いでるけど。」
と彼は言いますが、私には全然見えないし聞こえません。
何言ってるのかな?と思いましたが、パラパラと雨が降り出したので、もうおじいさんのことを見ないで欲しかったのですが、
「なんだよー、何か大声で騒いでんだけど、あの帽子、じいさんのだったのかな?ちゃんとしとけばいいのにっ」
と、私には見えないおじいさんの事で怒っている様子です。
時刻は9月の夕方4時くらい、まだ明るいけど早く帰りたくなってしまいました。彼はさっきの事で機嫌が悪くなっていたので、そのおじいさんは私には見えなかった事を言いませんでした。

帰りのバス

軍人さん
軍人さん

彼と駅で別れ、家路につきました。
電車を降りたらバスで家まで30分ほどです。
JRで隣の市まで行っていたので、6時くらいになって辺りは暗くなってしまいました。

定刻でバスが来ました。ターミナルから乗ったのは、私と女の人1人だけでした。
私はバスの左側の後ろの方に乗りました。
バスはゆっくりと走ります。大きなバスで、座席も柔らかで、早く家に帰ってお風呂にはいりたいなぁと思いました。
私の家にあと10分くらいの所で、乗客の女性が降り、私と運転手さんだけになりました。

家の手前にT坂という長い登り坂があり、急に森のように両側からうっそうと大木が生い茂るので、明るいバスの中がバスのガラスに映りました。
「わぁT坂は真っ暗だな。」
と思い、そろそろ降車ボタンを押さないと・・・と顔を上げると、バスの1番前の席に、兵隊さんが座っています。
座っているのが、バスのフロントガラスに映っていて、1番前なのでおなかのあたりまで見えました。
その兵隊さんはカーキ色の軍服を着ていて、襟は立て襟で、帽子もなんだか士官みたいなちょっと位の高い人がかぶりそうなものをかぶっていました。私は視力が2.0なので、本当にはっきり見えます。
「あれ?あんな服装の人、駅にいたっけかな?」
ピンポン。と降車ボタンを押し、あわてて定期券を探しました。
兵隊さんに気をとられていたので、出し忘れていて、運転手さんをすこし待たせてしまい
「すみません。」
と言ってバスを降りました。
降りてから、あっ 兵隊さんは・・・と思いバスを見上げましたが、もう見えませんでした。

家に着いて、母に
「ねぇ、バスの1番前に兵隊さんが乗ってたよ」
と言うと
「ああ。秋の彼岸だから、どっかのウチへ帰ってきたじゃない?」
と言われました。

なるほど。ゲートボール場のおじいさんも、兵隊さんも、お彼岸だから帰ってきていたのかな?と思いました。
後日、彼にそのことを言うと、
「ええ!俺だけ見えてた?やめてよーマジか」
とすごく怖がっていました。

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