朝霧高原をドライブ
配達先が知らない場所
高校生の時、母の仕事でちょっと遠いところまで届けものをするので一緒に行った時の話です。
母は20歳で結婚しすぐ私を産んだため、あまり道を知らなくて、地元でもよく道に迷います。
この時も、
「お客さんが言った通りに紙に書いてあるから、その道順で行こうと思うだけど・・・」
と、道に迷いそうな感じで出発しました。
朝霧高原は地元というよりちょっと遠い観光地で、高校生の私にも土地勘などありませんので、どうにかたどり着ければラッキーという思いでした。

すれ違った人
そこは朝霧高原と言う地名だけあって、途中からすごい霧でした。小雨だったのも霧の原因かもしれませんが、行けども行けども霧・霧・霧で、どこで曲がるんやら、何が見えたら左やら・・・となってしまいました。当時はカーナビも無く、とにかくメモの通りに行くしかありません。
「大きな道だから、しばらく真っすぐだよねぇ」
と走っていると、外の霧の中、歩いている人とすれ違いました。私が助手席に座っており、その人は道の左端をこちら向きに歩いていたのですが、なんだか違和感を覚えました。
「ママ、いますれ違ったひと、こんな山奥で一人だったよ」
と母に言うと、
「こんな山でも、住んでる人はいるんだから。」
うーん。そうか、じゃあ何が違和感だったのだろう。
「あっ、傘も持ってなかったよ」
「それは本人の責任じゃない」
それもそうだな・・・ 違和感。違和感。違和感。
「あっ。」
何が違和感か、急にわかりました。その人には顔がありませんでした。顔と、袖から出ているはずの手も無く、足もありませんでした。服だけが歩いていました。でもちゃんと服のしたには体があるようなふくらみで、動きも自然に歩いていました。
「ママは、そんな人見てないよ。」
と母が言うので、
「あ、うん。見間違いかもしれない。」
と言い、配達に気持ちを戻しました。
それがなんだったのかわかりません。もやーっとする心霊体験でした。ちなみにその人の服の柄は、白地に赤のギンガムチェックでした。