犬が吠えた先
犬は何か見えてる

高校生の時の話です。
仲の良い友達の家に、黒いプードルがいました。
私はこの友達の家族にも仲良くしてもらっており、自分の家に帰るまでは、この友達の家に入り浸りでした。
その日はおばちゃんが、
「ちょっと留守番してて、すぐ帰ってくるから。」
と言い、友達はバイトに行き、私はこのプードルと一緒に寝転がっていました。
私はこのプードルが大好きで、後にこのプードルの子犬を自宅で飼ったりしました。
家の間取り
私とプードルと寝転がっていると、プードルはおばちゃんが恋しいので、出窓に飛び乗ってお座りの状態でずっと外を見つめていました。
その当時、安室ちゃんがまだ18歳で、友達がビデオテープに録画しまくったものがあり、それを見ていました。
1階はおばちゃんの店舗で、2階がおうちです。
家族の人はみんな外階段を登ってきます。
2階には友達の両親と妹の4人家族で、あとは私がほぼ毎日そこにいました。私が寝転がっていたのは2階の角部屋で、友達の部屋は西向きで玄関のほうに窓がひとつ、出窓は北向きでした。
友達の妹の部屋はすぐ隣で、その南に台所とリビング、友達の両親の部屋はその奥にありました。
誰かが階段を上がってくる
プードルはずっと外を見つめていますが、おばちゃんは帰ってきません。
まだ明るい午後3時くらいなので、当時中学生だった友達の妹も帰ってきません。
だいたいおばちゃんが帰ってきたら、車の音がします。
ぼやーっと出窓の下のベッドに寝転がり、プードルを見上げていると、プードルが急に下をのぞき込みました。猫でも通ったかな?と思っていると、外の階段をカン、カン、カン、カン、と上がってくる音がしました。
あれ?友達の妹はまだ部活のはずだけどな・・・と玄関の方を見るも、誰も来ません。
「ん?」
降りる音もしない割に誰も来ないので、立って玄関から階段をのぞくと誰もいません。
プードルも玄関の方を見ています。
プードルに
「誰か来たよね。」
と言いますがもちろん返事はしません。
変なの。と思っていると、プードルが、ワン!と吠え、また カン、カン、カン、カン、と誰かが上がってきました。
プードルも、音の先をじっと見ています。
あぁ、犬も聞こえるんだな。吠えたから、見えてるのかな。と思いました。
待っていても誰も来ません。
しばらくすると、また、カン、カン、と足音が。
まったく、どうせまた誰も来ないんでしょ。とおもいました。
すると今度はプードルが結構、激しく吠えました。
「わっ。」
なんか、怖いことに誰もいないように見える玄関に向かって吠えています。
そして、続けて廊下に向かって吠えました。
おやおやおや・・・
プードルは、1回出窓から降りて、廊下へ出て行って吠えています。しかも、
「ウウゥー」と、警戒したり威嚇したりする時の声を出しています。
え、誰か入ってきたみたい・・・と感じました。
すぐにプードルは出窓へ戻ってまた外を見つめています。
やっぱり誰かいる
プードルは外を見つめているけど、私はどうしようかな、と思ったその時。
カチャ カチャン。カチャ カチャ カチャ・・・
台所から、小皿をまとめて移動している音が聞こえます。
耳を澄まして聞いてみると。
台所に入ってすぐ右の食器棚から、小皿をまとめて持って、その向かい側にあるシンクの横のスペースにその小皿を置いては、また持って・・・を繰り返しています。
人んちなのに、どこかさえ詳細にわかってしまう・・・
いやいやそうじゃない、泥棒だったら怖いから、見にいこう。
私は、泥棒がいたら投げつけようと友達の目覚まし時計を持ち、そーっと台所へ近づきました。
近づいている最中にも、お皿のカチャカチャという音はしています。
台所のギリギリまで近づきました。
台所のドアは閉まらないようになっているので、もう、すぐそこは台所です。
この角の先、50cmくらいのところに誰かいる・・・
もしかしたら、ブン殴ろう!
えいっと台所に入りましたが、ウソのようにだーれもいません。
「はぁ?」
すると後ろの方からまたカン、カン、カンと足音がして、今度こそおばちゃんが帰ってきました。
おばあちゃんかもしれない。

おばちゃんに今あった事を伝えると、
「おばちゃんの亡くなったお母さんかもしれない。」
おばちゃんの目には、きらりと涙が浮かびました。
聞くと、おばちゃん達は東北からこちらへ移住してきて、この家が建ったばかりの頃一緒に住んでいたそうです。そして、よくこの台所で、お皿を洗ったり、整頓して片づけてくれていたそう。
「きっとそうだ。お母さんだ。」
おばちゃんはすぐ奥の部屋のお仏壇の所へ行き、お線香をあげて、合掌しました。
そして、このプードルは、私のおばあちゃんが亡くなった後に飼い始めたから、おばあちゃんだとはわからないから吠えても変じゃないんだよ、と教えてくれました。
私は時計を投げつけようとしました、ごめんなさい。
でも、あまりにリアルに聞こえたから・・・