ひとの痛み
家庭教師K先生とおでかけ

高校生の頃、数学の家庭教師のK先生という25歳位の先生を親が雇っていました。
K先生は、16歳の私を妹のように可愛がってくれて、勉強のないお休みの日に車で遠出に連れて行ってくれたりしました。
ちなみに弟の家庭教師も同じイニシャルKさんです。弟の家庭教師Kさんは心霊体験の多い先生で、私の先生はそういう事はあまりありませんでした。
ある土日のどちらかで、K先生が『清里』という所へ連れて行ってくれることになりました。清里ですごくおいしいソフトクリームがあると言い、あと美味しいレストランも連れてってくれるというので、楽しみに出かけました。
太平洋側から向かったのですが、16歳だったのでどんなルートを通ったのかは覚えていません。ただ、大きな道や山道を通ったことを覚えています。
急に感じる凄い痛み
朝から出かけて、午前中の早めの時間です。
16歳の私はもちろん道なんて知りませんので、ジュースを飲んだり、先生と話したり、景色を眺めたりしていました。
すると突然、ズキン!と足が痛みました。
えっ?と足を見ましたがどうにもなっていません。
が、どんどん痛みが増します。
え?どうしたんだろう
足の右側の側面(外側)がザーーーっと擦れたようなひどい痛みです。摩擦で熱いような、それと同時に右腕の外側にも、同じ痛みが襲ってきました。
かなり広い面積で怪我をしている感覚がします。
「先生!痛い!痛い!痛い!」
と、大きな声で叫び、助手席で頭を下に垂れたような姿勢で伏せってしまいました。
ジンジンと熱くて痛い・・・!
先生はビックリして、
「どうしたの、大丈夫?!どこか車を停めるから!」
と、しばらくして左に車を寄せて路上で停止したのがわかりました。
その道路で
「ううぅ、痛い、痛い・・・」
しばらく休むと痛みがおさまってきました。
「どうしよう、帰る?病院行く?」
と先生はオロオロしていました。
だいぶ痛みが落ち着いたころに、どういう痛みが体に走ったのかを先生に話しました。
「それで、わかんないけど痛くて、でも今はどういうわけか平気なんだよ」
すると先生が、
「・・・ちょうどさっき通ったあたりで、少し前にバイクの死亡事故があったんだよ」
と神妙な面持ちで話し始めました。

「お花が供えてあったの見た?」
と聞かれましたが、私は全然気づきませんでした。
「もしかして、そのバイク乗りの痛みが再現されたのかなぁ?」
と先生は言い、でも何故かなと首をかしげていました。
息が止まりそうなほど、熱くて痛くて・・・
もし事故をしたひとの痛みの記憶だったのなら、バイク事故ってすごく痛いんだな、やだな、と思いました。
なんで急にそんなことになったのかはわかりませんが、元気を取り戻した後は、清里でおいしいアイスクリームとハンバーグを食べ、帰りは先生が違うルートを使って帰るようにしてくれました。
それから20年後

だいぶ時が経って、20年後です。
私の息子が
「スケボーってどうやって走るの?」
とプレゼントしたスケボーを持って私に聞きました。
息子が欲しがったから買ってあげたけど、私は乗れないからなぁ・・・
「Youtubeで見たけどねぇ、乗れるひとの最初の乗り方見てもわからない」
と言います。
うーん 考えると、あっ。
弟のお嫁さんはスケボーで街中を移動できると言っていたので、お嫁さんに尋ねることにしました。
弟は、学生時代に家のまわりでスケボーの練習をしていて、帰ってきたと思ったら
「田んぼに落ちた」と泥だらけで帰ってきたことがありました。
確実にお嫁さんの方がスケボーは上手そうだ・・・
「Kちゃーん。息子君がスケボー買ったんだけど、教えてやってほしいよー」
とお願いすると、
「じゃあちょっと最近やってなかったから、練習してから教えるかぁ」
と、そのために、丁寧に練習を開始してくれたのです。
あとの祭りですが、私がこんなお願いをしたせいで、子供が4人いて毎日やることがたくさんあって忙しいお嫁さんを、コンクリートの上で転ばせてしまったのです。
脇から胸にかけて凄く痛い
「ねぇ!Kちゃんがスケボーに乗ってて転んで、体をコンクリートの輪留めに打ち付けちゃったみたいだよ、すごく痛そうだよ」
と母から電話があり、びっくりして実家にむかいました。
弟のお嫁さんは本当によくできた人で、
「大丈夫だよー、私が運動不足だっただけだよー」
と笑顔で言ってくれました。
もう、申し訳なくて反省です。
「本当?忙しいのに私が頼んだりしたから・・・」
と謝っていると、
ズキン!と右わきの奥から体の中心に、激痛がはしります。
「うう、痛っ」
申し訳なくて私まで痛くなったのかな?んもう・・・(TT)
お嫁さんは、しばらく痛かったので、新しくできた整形外科へ行き、
「レントゲンも撮ったけど、骨折も何もないみたい、時々、態勢によっては痛いってだけかな」
と話していました。
でも、話をしていると、私の右わきの奥が、ズキン!と痛みます。
息が止まりそうな痛みです。
おかしいなぁ。何だろう。
お嫁さんが、二世帯の隣の家に帰ったあと、母に、お嫁さんに悪い頼み事をしちゃったよー、と、を話していると、やはり、ズキン!と右わきの奥が痛みます。
あまりに痛いので、もしかしてお嫁さんの痛みを感じているのかもしれないと思い、母に、
「お嫁さん、スゴイ痛いと思う。Jリーグのスポーツドクターが開業した整形外科へ忙しいだろうけど行ってくれるように頼んでみて」
と母からお願いしてもらい、翌日また整形外科へ足を運んでもらいました。
スポーツドクターすごい
整形外科から帰ってきたお嫁さん、
「骨にヒビはいってたぁ!痛いとおもったよー」
と、笑顔で教えてくれたと、母から連絡がきました。

どういうわけで、あの痛みが伝わったのか分かりませんが、物凄い痛かったんです。不思議なこともあるもんだなぁと思うと同時に、弟のお嫁さんはすごく我慢強い人だということも、よぉーくわかりました。
あんなに痛いのに・・・ 笑顔で大丈夫だよっ!といえる、素晴らしいひとです。
そんな、不思議な日常の小話でした。