長野県の旅館
結婚するCちゃんのお祝い旅行

20代中頃のお話しです。
私にとってCちゃんは幼馴染でずっと保育園・小学校・中学校と同じで、大人になってもまだ仲良しの大切な友達です。
このCちゃんが、長野県出身の男性とめでたく結婚することが決まったので、中学でいっしょだったMちゃんとYちゃんと、4人で長野県へ1泊旅行に行きました。
運転はCちゃんとMちゃんが主にやってくれたので、美しい長野県の景色を見ながら過ごすことが出来ました。
松本城のあたりまで来ると、ナビが『松本城周辺です。案内を終了します』とか言って、案内が終わってしまいました。
看板を見てぐるぐるしていましたが、なかなかたどり着きません。
おかしいね、ぐるぐるしちゃうね、なんて言っていると、ひとりが
「お城の周りは、迷うようにつくられてるんだよ!」
「そうか!」
「昔の人すげえ!」
とか言いながら、長野城や城下町を楽しみ、その後、富山県の黒部ダムに行きました。
黒部ダム

黒部ダムは、昭和31年着工、171人の殉職者と7年の歳月をかけてつくられた水力発電専用のダムで、貯水量2億トンだそうです。
すごく大きなダムに、ひんやりした空気。ソフトクリームなどを食べて、4人で写真を撮りました。
あちこちで撮ったのですが、発光の強い小さな光りがたくさん飛んでいる石の所でも写真を撮りました。
青い小さな光の粒(スワロフスキーの小さなラインストーンみたいな)が、ヒュンヒュンと飛んでいて、それは意志を持って飛んでいるように見えました。
変わった虫がいるのかもしれない、つかまえようとしても捕まえられないので、そのままその大きな石の前で写真撮りの列に並びました。
今思えば、これが良くなかったのかもしれません。
私達は、建設による殉職者の慰霊碑の前で写真を撮ってしまったのです。
他の観光客が並んでまで写真を撮っていたので、つい何か良く確認せず写真の列に並んでしまいました。
写真を撮り終わってからこの石に彫られている文字を読んで、
(あ、慰霊碑だから光るものがたくさん飛んでいたんだ・・・ごめんなさい)
と思い、その場を離れました。
温泉旅館
旅館へつくと、和風でとても素敵です。
荷物を置いてしばらくしたら、温泉に入ろうという流れになり、CちゃんとYちゃんは旅館の中を見てくる!と出かけ、部屋は私とMちゃんだけになりました。
畳に寝転んで、ぽやーんとしていると、あれ?さっきの黒部ダムで見た光が部屋の中を飛んでいます。
結構な速さで、でもちゃんと目視できます。
ありゃりゃ・・・ 見覚えのある光・・・と、目で追っていると、Mちゃんが
「何?虫?」
と聞くので、ダムで見た事と、この部屋にも同じのが飛んでると説明すると、
「えっ・・・」
と固まってしまい、
「お塩、調理場からもらってくる?! ちょっと・・・ねぇ?安心てゆうか」
と、栄養士で調理師のMちゃんが提案します。そこへ、CちゃんとYちゃんが帰ってきました。
「温泉いこう!」
元気にCちゃんが言います。
そのまま話は宙に浮いたままで、Cちゃんの元気なテンションに(その話をしづらく、怖がりなのも知っていたので)とりあえず黙って温泉へ行く雰囲気になりました。
温泉の後は卓球

温泉から部屋へ帰る途中に、卓球が無料でやれると案内があり、私達は卓球しよう!と盛り上がり、案内の通りに旅館内を歩くと、卓球は地下にあるようです。
階段をおりると、誰もいないのですぐに卓球をやり始めました。
Cちゃんは、日本国内の有名なバスケットボールチームと練習したり、地元の中学バスケの監督もしているので、遊びの域を越え、熱い戦いが始まりました。
20代半ばといえど、子供に戻ってしまい、卓球に熱中していました。
途中で、卓球のボールが階段の方に飛んでいってしまったので、私が取りに行きました。
また温泉にはいらないといけない位、運動しちゃったよ・・・ なんて考えながら、ボールに手を伸ばすと、階段の真ん中位に男性が立っていました。
こちら向きに立っていたので、あっ、順番を待っているんだなと思い、走ってみんなのところへ戻り、
「おじさんが待ってるみたいだから、もうやめよう。」
と言うと、
「張り紙に『仲良く順番にやって』ってかいてあったもんね」
とMちゃんがラケットを片づけ始めました。
すぐに片づけをし、階段へ近づくと、
「いないじゃん。見てただけじゃない?もう1回卓球やろう」
とCちゃん。
「え、でもこの上で待ってるかもよ、私見てくる」
とMちゃん。
「えー確かにおじさんがさぁここらへんに・・・」
と言って私は階段の、おじさんが立ってたところに立つと、目の前はコンクリートで、ここに立っても前が見えるどころか、ここに立ってる自体おかしい感じでした。
なに、コレ・・・
「ねーねー!やばいよ」!
とMちゃんの声。
みんなで階段を上がると、地下へおりた時、ドアに鍵をかけていたことを思い出したMちゃんが、施錠されているのを確認して大きな声を出していたのです。
「げっ・・・鍵かかってるじゃん」
「じゃあ人なんか入ってこれないじゃん」
CちゃんとYちゃんは、大の怖がり。
「・・・早く部屋に帰ろうっ!」
みんな足早にそこから廊下へ出て、部屋へ向かうエレベーターに乗り込みました。
翌朝
夜は、案外と何も無く、部屋に備え付けの木製パズルなどで遊び、朝が来ました。
旅館の朝ご飯がおいしく、葉っぱに巻かれたおいしい味噌がおかずに出てきて、ご飯がすすみました。
支度が済み、2日目の行程は、善光寺です。
荷物を持ち、支払いを済ませ、さて出発というところで、なんと私が腹痛です。
「ちょっとゴメン、なんか腹痛、トイレ行ってくる」
と皆に待ってもらい、トイレに入りました。
何かが出るみたいな腹痛のような、でも何も出ない、時間だけが刻々と過ぎます。

「ねぇー大丈夫?」
Mちゃんが様子を見に来てくれました。
「腹が痛いんだけど、苦しい、どうにもならない」
Mちゃんが、
「ゆうべ変な事あったし、いったんこの旅館出よう?」
と言います。
「うぅ~」
お腹が苦しくて、立つこともつらい状態です。
何だこれ?
「出よう!出よう!何かおかしいよ、出よう!」
とMちゃん。
腹痛がひどすぎて、正常な判断ができてないのかも・・・とうっすら感じ、腹痛の激痛の波のあいまに、やっとのことでズボンを上げ、フラフラとトイレを出ました。
旅館の人も心配そうにこちらを見ています。
40分もトイレにこもっていたようですが、もう痛くて痛くて、善光寺の間、車で皆を待っていようと思いました。
善光寺へ出発
この朝は、Cちゃんの運転で、私が助手席でした。
腹痛でしばらく喋れなかった私ですが、しばらくするとウソのように腹痛がおさまりました。
かわりに、右肩が重く、痛くなってきましたが、腹痛に比べたらそんなにうなるほどではないので、言わずに黙っていました。
「具合悪くなったら、すぐコンビニとか寄るから、遠慮しないで言ってよ」
とCちゃん。
運転してもらっているのに、申し訳ない。ありがとう( ;∀;)
昼前に善光寺へ着くと、空は晴れて木々も綺麗、駐車場もすんなりと停められて車外へ出ました。
「あー気持ち良いねぇ」
少し歩いて善光寺の敷地に入ると、右肩がフッと軽くなりました。
あっ・・・ お寺だから?ラッキー
嬉しい気持ちになり、
「実は、旅館を出たあとからすっごい右肩が重かったんだよねぇ~、お寺に来たら、スッキリ治った!ありがたやありがたや」
と言うと、びっくりした表情のCちゃん。
「えっ・・・ どうした?」
と聞くと、
「私、左の肩が痛かった・・・ 今治ったけど・・・」
んん?
助手席の私の右肩と、運転席のCちゃんの左肩・・・
ということは、
「間に誰かいたのかも」
「!!!(◎_◎;)」
無言でしばらく歩き、
「お寺に来たかったんじゃない?」
ということで落ち着きました。
南無南無・・・
